Netflix公式レポートを数え直す連載の最後です。
上半期のシリーズ上位10本を、もう一度出します。ここに1本だけ、これまで触れてこなかった作品があります。
7位『逐玉』。中国ドラマです。3億5,670万時間。
韓国の『恋の通訳、できますか?』(6位・3億7,770万時間)のすぐ下にいます。
この作品は何か
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品 | 逐玉:翡翠の君(原題 逐玉) |
| 視聴時間 | 3億5,670万時間 |
| 視聴数 | 1,160万 |
| 総尺 | 30時間47分 |
| 話数 | 全40話 |
| 全体順位 | 7位 |
| 世界配信 | あり |
ジャン・リンホー、ティエン・シーウェイ主演の時代劇ロマンスです。肉屋の娘と没落した侯爵が、それぞれの目的から偽装結婚し、次第に本物の愛になっていく(Filmarks)。
数字の異常さに気づいてほしい
上位10本の中で、この作品だけ形が違います。
| 作品 | 視聴時間 | 視聴数 | 総尺 |
|---|---|---|---|
| 彼の真実、彼女の嘘 | 4億5,430万 | 1億400万 | 4:22 |
| ブリジャートン家 S4 | 8億8,980万 | 1億20万 | 8:53 |
| 鉄槌教師 | 5億1,470万 | 4,820万 | 10:41 |
| 恋の通訳、できますか? | 3億7,770万 | 2,860万 | 13:11 |
| 逐玉 | 3億5,670万 | 1,160万 | 30:47 |
視聴数は1,160万しかありません。 『彼の真実、彼女の嘘』の9分の1です。
それでも視聴時間はほぼ同じ水準に来ている。理由は明快で、30時間47分という尺です。
『逐玉』は9分の1の人数で、上位10本に入っている
『逐玉』を最後まで見た人は、『彼の真実、彼女の嘘』を7本見たのと同じ時間をNetflixで過ごしています。
中国ドラマは全体的に長い
『逐玉』が特別なのかを確かめました。レポートの作品を言語ごとに平均します。
| 言語 | 本数 | 平均の総尺 |
|---|---|---|
| 中国語圏 | 105本 | 20時間13分 |
| 韓国語 | 605本 | 13時間57分 |
| 日本語 | 1,313本 | 7時間02分 |
中国語圏が最も長い。 韓国の1.4倍、日本の2.9倍です。
しかも韓国の尺は7年で36%縮んでいます。中国はその流れに乗っていません。40話・30時間という形を、まだそのまま出している。
それでも本数は105本しかない
規模を確認しておきます。
| 本数 | 視聴時間 | 1本あたり | |
|---|---|---|---|
| 韓国語 | 605本 | 80億790万時間 | 1,324万時間 |
| 日本語 | 1,313本 | 51億3,190万時間 | 391万時間 |
| 中国語圏 | 105本 | 10億5,600万時間 | 1,005万時間 |
中国語圏はNetflix上に105本しかありません。韓国の6分の1、日本の12分の1です。
けれど1本あたりは1,005万時間で、日本(391万時間)の2.6倍。韓国(1,324万時間)に迫っています。
「本数は少ないが、1本が重い」。これは韓国とも日本とも違う3つ目の形です。
決定的な違いは「誰が作ったか」
ここが今日の結論です。公開日の欄で分けると、こうなりました。
| Netflixが自社作品として出しているもの | |
|---|---|
| 韓国語シリーズ | 239本 / 605本(40%) |
| 中国語圏シリーズ | 22本 / 105本(21%) |
『逐玉』の公開日欄も空でした。つまりNetflixが作った作品ではなく、他所で作られたものをNetflixが仕入れて棚に置いているということです。
この差は大きいと思います。
- 韓国 … Netflixが企画から入り、世界配信を前提に作らせている(605本中239本)
- 中国 … 中国国内向けに作られたものを、Netflixが後から買っている(105本中22本)
『逐玉』が世界7位に入ったのは、Netflixが狙って作らせた結果ではありません。中国国内で当たったものを買ったら、世界でも当たったという順序です。
だから「韓国の次は中国」とは言えない
数字だけ見ると「中国が来ている」と言いたくなります。1本あたりでは韓国に迫っているのですから。
けれど私はそうは読みません。理由は2つです。
1つめ。世界配信が30%しかない。 中国語圏105本のうち世界の棚に並んでいるのは32本です。韓国は43%。仕入れである以上、権利の範囲が限られる。
2つめ。Netflixが作らせていない。 韓国のように毎年20本の新作を世界向けに設計している状態ではありません。仕入れは当たり外れが読めないので、Netflixから見ると計画に組み込みにくい。
つまり中国は「たまたま強い1本が入ってきた」段階で、韓国のように「毎年必ず数本出てくる」段階には来ていない。
以前の記事で、韓国コンテンツの価値は当たり1本ではなく605本という供給量にあると書きました。その意味では、中国はまだ韓国の位置にいません。
ただし、それは「これから来ない」という意味でもありません。次のレポートで105本が200本になっていたら、そのときは話が変わります。
連載のまとめ
8日間にわたって、Netflix公式の上半期レポートを1本ずつ数えてきました。分かったことを最後に並べます。
- 『鉄槌教師』は世界3位。韓国語作品は上位100本に18本、日本語作品は0本
- ただし本数は日本が2.2倍多く、視聴数ではむしろ日本がわずかに上
- 差の正体は尺。韓国は日本の2倍長い
- その韓国の尺も、7年で36%縮んでいる
- Netflixの視聴時間の46%は、Netflixが作った作品ではない
- 上位10本を足しても全体の6.7%。大ヒット1本では回っていない
- 韓国は年20本しか出していないが、15本を世界の棚に乗せ、11本を1億時間に届かせた
- 『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』のように、韓国語ですらない韓国コンテンツが最大のヒットになる
- 『愛の不時着』は6年8か月経っても7,530万時間。旧作は死なない
順位のニュースは毎週出ます。けれど実数が出るのは半年に一度だけです。次のレポートは2027年の初頭。そのときにまた、同じやり方で数え直します。
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