インド映画が韓国映画の1.9倍見られていた——韓国はドラマの国、インドは映画の国

Netflix公式の上半期レポートを言語別に数えていて、予想外だった数字があります。

インドの映画は9億600万時間。韓国映画(4億8,900万時間)の1.9倍でした。

韓国ドラマの話ばかりしてきたので、映画の欄は正直あまり期待していませんでした。数えてみたら、まったく違う構図が出てきました。

映画の言語別

言語 本数 視聴時間 視聴数 1本あたり
ヒンディー語ほか(インド) 330本 9億600万時間 3億7,030万 274万時間
日本語 666本 4億9,000万時間 2億7,820万 74万時間
韓国語 458本 4億8,900万時間 2億7,310万 107万時間
タイ語 143本 1億7,600万時間 8,980万 123万時間

本数はインドが一番少ないのに、視聴時間は一番多い。 1本あたりでは韓国の2.6倍、日本の3.7倍です。

インド906百万時間(映画)
日本490百万時間(映画)
韓国489百万時間(映画)
タイ176百万時間(映画)

なお日本語と韓国語の映画は、視聴時間でも視聴数でもほぼ同じでした。映画では日韓に差がありません。

引っ張っているのは1本

インドの9億600万時間のうち、最も大きいのがこの作品です。

項目 内容
作品 Dhurandhar(धुरंधर)
視聴時間 1億2,700万時間
視聴数 3,700万
尺 3時間26分
映画全体の順位 8位

ランヴィール・シン主演、アディティヤ・ダール監督。2000年代初頭のカラチの裏社会に潜入した工作員の話です。2025年に劇場公開され、Netflixでの配信は2026年1月30日から(Netflix)。

尺が3時間26分です。 これはNetflixの映画としては異例の長さで、レポート全体の映画の平均(1時間50分前後)の2倍近くあります。

『大洪水』(韓国・1時間49分)と比べると、1人が最後まで見たときに積み上がる時間が2倍違う。インド映画が視聴時間で強いのは、この尺がかなり効いています。

インド映画1本の尺は3時間26分。韓国映画の平均のほぼ2倍

韓国はドラマの国、インドは映画の国

ここが今日いちばん言いたいところです。同じ国のシリーズと映画を並べます。

シリーズ 映画 シリーズ÷映画
韓国 80億790万時間 4億8,900万時間 16.4倍
日本 51億3,190万時間 4億9,000万時間 10.5倍
Netflix全体 743億5,400万時間 233億1,000万時間 3.19倍
インド 3億9,000万時間 9億600万時間 0.43倍

インドだけ、逆です。 映画のほうがシリーズより2.3倍多く見られています。

韓国は16.4倍のドラマ偏重。インドは0.43倍の映画偏重。同じNetflixの上で、まったく違う形をしています。

韓国16.4倍(シリーズ÷映画)
日本10.5倍(シリーズ÷映画)
Netflix全体3.19倍(シリーズ÷映画)
インド0.43倍(シリーズ÷映画)

図にすると、インドだけが別の場所にいるのが分かります。

同じサービスの上でも、国によって「何で見られているか」がまったく違う

なぜこうなるのか(推測)

数字が言っているのはここまでなので、以下は見立てです。

インドは、もともと映画の国です。 年間の製作本数でも観客動員でも、映画産業が文化の中心にあります。テレビドラマも大量にありますが、世界に出ていく形になっているのは映画のほうです。

韓国は、ドラマで世界に出ました。 映画も『パラサイト』でアカデミー賞を取っていますが、Netflix上での数字はシリーズが圧倒しています。以前の記事で書いたとおり、『パラサイト』の上半期の視聴時間は450万時間です。

そしてNetflixから見ると、契約者を長く留めるにはシリーズのほうが直接効きます。 2時間で終わる映画より、14時間の連続ドラマのほうが解約されにくい。

だからNetflixは韓国に投資し、インドからは映画を仕入れる。役割が分かれているのだと思います。

実際、『Dhurandhar』の公開日欄は空でした。Netflixが作った作品ではなく、劇場公開後に配信権を買ったものです。報道では285クロール(28億5,000万ルピー)とされています。

日本にとっての意味

日本語映画は666本で4億9,000万時間。韓国語映画の4億8,900万時間とほぼ同じでした。

ただし1本あたりでは、韓国107万時間に対して日本74万時間。本数を出しているぶんだけ薄まっています。

これはシリーズで見た構図とまったく同じです。日本はNetflixに置いてある作品の数が多く、1本あたりが伸びない。理由も同じで、大半が世界配信されていないからです。

  • 韓国映画458本のうち世界配信は54本(12%)
  • 日本語映画666本のうち世界配信は74本(11%)

どちらも1割強で、この点では差がありません。映画については、日韓は同じ場所に立っています。

ここが、実は今日いちばん引っかかるところです。

映画では日韓に差がないのに、シリーズでは1本あたり3.4倍の差がつく(韓国1,324万時間/日本391万時間)。同じ国が作っているのに、映画とドラマで結果がちがう。

映画 シリーズ
日本の1本あたり 74万時間 391万時間
韓国の1本あたり 107万時間 1,324万時間
倍率 1.4倍 3.4倍
世界配信の割合 日本11% / 韓国12%(ほぼ同じ) 日本16% / 韓国43%

ここから先は私の見立てですが、差の正体は「世界の棚に出しているかどうか」に見えます。映画では日韓ともに1割強しか出していないので差がつかず、シリーズでは韓国だけが43%まで出しているので差がつく。

作品の質の話をする前に、置き場所の話で説明がついてしまう。 これは何度数えても同じ形で出てきます。

「インドが映画の国なのは当たり前では?」

そう思った方は正しいです。インドの映画産業が巨大なのは、数える前から知られています。

ではなぜ数えるのか。「当たり前だと思っていたことが、どれくらいの大きさなのか」を出すためです。

  • 映画偏重と言っても、シリーズの2.3倍という具体的な数字がつく
  • 逆に韓国の16.4倍という数字を置くと、韓国こそが極端だと分かる
  • Netflix全体は3.19倍なので、平均に近いのは日本(10.5倍)ですらない

印象では「韓国はドラマも映画も強い」と思いがちですが、数字を見ると韓国の映画はNetflix上ではかなり小さい(1本あたり107万時間、最上位の『大洪水』でも映画全体33位)。当たり前を数字にすると、当たり前でなかった部分が出てきます。

あなたは、最後にNetflixで映画を1本まるごと見たのはいつですか。ドラマばかり見ているなら、あなた自身が韓国型です。

まとめ

  • Netflix上半期の映画で、インドは9億600万時間。韓国(4億8,900万時間)の1.9倍
  • 引っ張っているのは『Dhurandhar』1億2,700万時間(映画全体8位)。尺が3時間26分
  • 韓国はシリーズが映画の16.4倍。インドは映画がシリーズの2.3倍で、完全に逆
  • Netflix全体ではシリーズが映画の3.19倍。韓国は極端にドラマ寄り
  • 日本語映画(4億9,000万時間)と韓国語映画(4億8,900万時間)はほぼ同じ
  • 世界配信の比率も日本11%・韓国12%でほぼ同じ。映画については日韓に差がない
  • 映画では差がないのに、シリーズでは3.4倍の差。分かれ目は世界の棚に出す割合(16% vs 43%)

次でこのレポートの話を締めます。最後は、韓国の次に来るかもしれない国の話です。中国ドラマ『逐玉』が、上半期の世界7位に入っていました。


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