『女神降臨』が今も1億3,220万時間——Netflixの視聴の46%は、Netflixが作った作品ではない

2020年のtvNドラマ『女神降臨』が、2026年の上半期に1億3,220万時間見られていました。

6年前の作品です。Netflixが作った作品でもありません。それでも、上半期のシリーズ全体で53位に入っています。

Netflix公式レポートを数え直す一連の記事の続きです。今日は「Netflixで見られているのは、Netflixの作品なのか」を確認します。

レポートの「公開日」欄が教えてくれること

このレポートには、作品ごとに公開日の欄があります。ただし、全部の作品に日付が入っているわけではありません。

公開日欄 意味
日付が入っている Netflixが自社の作品として出しているもの
空欄 よそで作られたものを、Netflixが借りて棚に置いているもの

この分け方で数えました。

Netflix作品 借りている作品
シリーズ 本数 4,141本 4,053本
シリーズ 視聴時間 391億7,000万時間(52.7%) 344億3,000万時間(46.3%)
映画 本数 1,905本 7,273本
映画 視聴時間 91億時間(39.0%) 141億1,000万時間(60.5%)

Netflixのシリーズ視聴時間の46%、映画の61%は、Netflixが作った作品ではない

映画にいたっては6割です。「Netflixオリジナル」という言葉の印象とは、だいぶ違う形をしています。

借りている作品の上位を見る

では、Netflixで最も見られている「Netflix以外の作品」は何か。シリーズの上位を並べます。

順位 作品 視聴時間
1 逐玉 シーズン1(中国) 3億5,670万時間
2 The Good Doctor シーズン1(米・2017年) 2億1,790万時間
3 メンタリスト シーズン1(米・2008年) 1億9,340万時間
4 パーソン・オブ・インタレスト シーズン1(米・2011年) 1億6,700万時間
5 Os Dez Mandamentos シーズン1(ブラジル) 1億5,890万時間
6 신이랑 법률사무소 シーズン1(韓国) 1億4,680万時間
7 ヴァンパイア・ダイアリーズ シーズン1(米・2009年) 1億4,590万時間
8 Smallville シーズン1(米・2001年) 1億3,700万時間
9 The Good Doctor シーズン2(米) 1億3,560万時間
10 女神降臨(韓国・2020年) 1億3,220万時間

2008年、2009年、2011年、2001年。 上位に並んでいるのは、十数年前のアメリカのテレビドラマです。

Netflixが数百億円をかけて作った新作の隣で、20年前の『Smallville』シーズン1が1億3,700万時間回っている。これがNetflixの実態でした。

韓国の「借りている作品」も強い

同じ条件で、韓国語作品だけを抜き出しました。

作品 元の放送 視聴時間
신이랑 법률사무소 シーズン1 1億4,680万時間
女神降臨 tvN・2020年 1億3,220万時間
아이돌아이 シーズン1 5,720万時間
나는 솔로 29期〜32期(恋愛リアリティ) 4,990万時間
哲仁王后 tvN・2020年 3,040万時間
模範タクシー3 SBS 2,990万時間
ソン・ジェ背負って走れ tvN・2024年 2,830万時間

『女神降臨』も『哲仁王后』も2020年の作品です。6年前のドラマが、今年の上半期に1億時間規模で見られている。

以前の記事で「配信は旧作の墓場ではなく再流通装置だ」と書きました。この表は、その言い方がまだ足りなかったことを示しています。旧作は再流通しているのではなく、現役で稼いでいます。

韓国映画は、借りているほうが古い

映画のほうも見ておきます。

作品 公開 視聴時間
어쩔수가없다(No Other Choice・パク・チャヌク監督) 2025年 730万時間
新感染 ファイナル・エクスプレス 2016年 570万時間
パラサイト 半地下の家族 2019年 450万時間

『パラサイト』が450万時間。アカデミー作品賞を取った映画でも、この規模です。

映画とシリーズでは桁が2つ違います。配信の主戦場は映画ではなくシリーズだということが、ここでもはっきり出ています。

この構造から何が読めるか

3つあると思っています。

1. Netflixは「制作会社」ではなく「棚」である。

視聴時間の半分近くを他社作品が占めているということは、Netflixの価値の半分は何を仕入れて、どう並べたかにあるということです。作ることだけが仕事ではない。

2. 古い作品には値段がつきにくい。

2008年の『メンタリスト』を1億9,340万時間回すのに、新作1本分の制作費はかかりません。同じ視聴時間を、はるかに安く買える。 Netflixが旧作を積極的に仕入れる理由はここにあります。

3. だから、作品には二度目の勝負がある。

『女神降臨』は2020年の作品です。放送当時の評価がどうであれ、6年後に世界の棚で1億時間回っている。テレビだけの時代には無かったことです。

数字の断り

公開日の欄が空だからといって、100%「他社作品」だと断言はできません。Netflixが自社作品と位置づけていないもの、と読むのが正確です。

また、この分類はレポートの欄をそのまま使っただけで、私が権利関係を調べたわけではありません。比率(46%・61%)は、あくまでレポートの欄に基づく数字として読んでください。

まとめ

  • Netflixのシリーズ視聴時間の46.3%、映画の60.5%は、公開日欄が空=Netflixの自社作品ではない
  • 借りている作品の上位は、2001〜2011年のアメリカのテレビドラマが占めている
  • 韓国では『女神降臨』(2020年)が1億3,220万時間で最上位クラス
  • 『パラサイト』は450万時間。映画とシリーズでは桁が2つ違う
  • 配信は旧作の墓場ではない。旧作は現役で稼いでいる
  • 作品には、放送が終わったあとに二度目の勝負がある

次は、上位の作品がどれだけ全体を支えているかを見ます。「大ヒット1本」がどこまで効いているのか、という話です。

数字の出典

この記事の数字は、Netflixが公表した半期レポート 「2026年上半期に見られた作品」 に添付されているデータを、1本ずつ全数集計したものです。

  • 集計対象: シリーズ8,195本/映画9,179本(2026年1月〜6月)
  • 合計は976億6,000万時間。公式発表の「97 billion hours 超」と一致します

順位や合計は公式発表そのままではなく、この一次データを自分で数え直した結果です。


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