韓国ドラマの尺は7年で3分の2になった——『ヴィンチェンツォ』27時間から『鉄槌教師』10時間41分へ

「昔の韓国ドラマは長かった」と、なんとなく思っている人は多いと思います。

私もそう思っていました。ただ、それを数字で見たことはありませんでした。

Netflix公式の上半期レポートには、作品ごとの総尺(全話を合計した長さ)が載っています。これを配信年ごとに並べてみたら、思っていたよりはっきりした形が出ました。

韓国ドラマの尺は、この7年で3分の2になっています。

まず、知っている作品で見てみる

数字の前に、名前の分かる作品を並べます。すべてNetflixで配信が始まった順です。

作品 Netflix配信開始 総尺
ヴィンチェンツォ 2021年2月 27時間00分
愛の不時着 2019年12月 22時間28分
海街チャチャチャ 2021年8月 20時間52分
二十五、二十一 2022年2月 20時間07分
キング・ザ・ランド 2023年6月 19時間00分
梨泰院クラス 2020年1月 18時間26分
おつかれさま 2025年3月 16時間35分
ザ・グローリー シーズン1 2022年12月 14時間16分
恋の通訳、できますか? 2026年1月 13時間11分
鉄槌教師 2026年6月 10時間41分

『ヴィンチェンツォ』27時間に対して、『鉄槌教師』10時間41分。同じ枠の作品なのに、長さが2.5倍違います。

『ヴィンチェンツォ』1本を見る時間で、『鉄槌教師』は2本半見られる

全体でも同じ形が出る

10本だけでは偶然かもしれません。レポートに載っている韓国語シリーズを、Netflix配信開始の年ごとに全部平均しました。

配信年 本数 総尺の中央値
2019年 19本 16時間49分
2020年 23本 16時間55分
2021年 29本 16時間07分
2022年 34本 14時間05分
2023年 33本 12時間43分
2024年 32本 8時間27分
2025年 38本 13時間07分
2026年(上半期) 19本 10時間41分
2019年16.8時間(中央値)
2021年16.1時間(中央値)
2023年12.7時間(中央値)
2026年上半期10.7時間(中央値)

平均ではなく中央値を使いました。極端に長い1本や短い1本に引っ張られないためです。

2019年の16時間49分から、2026年の10時間41分へ。36%減っています。

数字の断り

正直に書いておきます。

  • ここに入っているのは、レポートに載った作品(半年で視聴数5万以上)だけです
  • 「配信年」はNetflixで配信が始まった年で、制作年ではありません
  • 2024年が急に8時間台に落ちているのは、短編やバラエティが多く含まれた年だからだと思われます。翌年は13時間台に戻っています
  • 2026年は上半期の19本だけの数字です

だから「毎年きれいに減っている」とは言えません。2019〜2021年と2023〜2026年の間に段差がある、というのが表から読める形です。

Netflix全体はどうか

比較のために、韓国に限らずレポート全体で同じことをしました。

配信年 本数 総尺の平均
2019年 358本 6時間03分
2022年 523本 5時間32分
2026年(上半期) 258本 5時間08分

Netflix全体はほぼ横ばいです。 5〜6時間の幅から動いていません。

つまり縮んでいるのは韓国のほうで、しかもNetflixの標準に近づく方向に動いています。

なぜ縮んだのか(ここからは推測です)

数字が言っているのはここまでです。理由は表には書いていないので、以下は私の見立てとして読んでください。

1つめ。世界配信では、長さがそのまま入口の高さになる。

前の記事で、韓国は1シーズン完結型(リミテッドシリーズ)が2.8倍見られていると書きました。27時間の作品を「今日から見てください」と勧めるのは、10時間の作品を勧めるより明らかに難しい。

2つめ。制作費の問題。

尺が長ければ、その分だけ撮影日数も出演料もかかります。話数を削るのは、最も分かりやすい費用の削り方です。

3つめ。削られたのは「何も起きない回」だと思う。

16話あった頃の韓国ドラマには、事件が進まない中盤の回がありました。人物が悩んだり、関係だけが動いたりする回です。

あれが無駄だったのかというと、私はそうは思っていません。あの時間があるから、終盤の1シーンが効いたという作品はいくつもあります。

ただ、世界配信の棚では、その回で離脱されるリスクのほうが大きい。だから先に消えた。そう考えると辻褄は合います。

何が言えるか

「最近の韓国ドラマは物足りない」と感じている人がいるなら、その感覚は気のせいではない可能性が高いです。

実際に、1作品に入っている時間が3分の2になっています。同じ話数の感覚で見ると、密度は上がっているが、余白は減っている。

そしてこれは質が落ちたという話ではありません。世界の棚に合わせて、形を変えたという話です。『鉄槌教師』は10時間41分で、上半期の世界3位を取りました。短くしたから勝てなくなったわけではない。

まとめ

  • Netflix公式レポートの総尺データで、韓国ドラマの長さの推移を出した
  • 2019年の中央値16時間49分 → 2026年上半期10時間41分。36%減
  • 『ヴィンチェンツォ』27時間 → 『鉄槌教師』10時間41分と、具体的な作品でも2.5倍の差
  • Netflix全体の平均は5〜6時間で横ばい。縮んでいるのは韓国だけで、全体水準に近づいている
  • 理由は数字には書いていない。世界配信での入口の高さ、制作費、この2つが効いていると見ている
  • 短くなったから弱くなったわけではない。10時間41分の『鉄槌教師』が世界3位を取っている

次は、この「視聴時間」という物差しそのものを疑います。視聴数で数え直すと、上半期の1位は別の作品になります。

数字の出典

この記事の数字は、Netflixが公表した半期レポート 「2026年上半期に見られた作品」 に添付されているデータを、1本ずつ全数集計したものです。

  • 集計対象: シリーズ8,195本/映画9,179本(2026年1月〜6月)
  • 合計は976億6,000万時間。公式発表の「97 billion hours 超」と一致します

順位や合計は公式発表そのままではなく、この一次データを自分で数え直した結果です。


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