『恋の通訳、できますか?』が上半期の世界6位——韓国の武器は「リミテッドシリーズ」だった

Netflix公式の上半期レポートを数え直す話の3回目です。

今日は1本の作品を取り出します。キム・ソンホ主演『恋の通訳、できますか?』。上半期で3億7,770万時間見られ、全シリーズ中6位でした。

韓国ドラマとしては『鉄槌教師』に次ぐ2位です。

まず数字を置く

項目 数字
視聴時間 3億7,770万時間
視聴数 2,860万
全体の順位 6位(シリーズ8,195本中)
作品の総尺 13時間11分
配信開始 2026年1月16日
世界配信 あり

多言語通訳士チュ・ホジン(キム・ソンホ)が、世界的トップスター俳優チャ・ムヒ(コ・ユンジョン)の専属通訳になるところから始まる全12話のロマンティック・コメディです(オリコン)。

日本の俳優・福士蒼汰も出演しています。

3億7,770万時間は、『ストレンジャー・シングス5』の65%にあたる

「リミテッドシリーズ」という形

この作品の正式な表記は『恋の通訳、できますか?: リミテッドシリーズ』です。1シーズンで完結する形という意味です。

レポートの韓国語シリーズ605本を、この形かどうかで分けてみました。

本数 1本あたりの視聴時間
リミテッドシリーズ 216本 2,240万時間
それ以外(シーズン制) 389本 810万時間

同じ韓国語作品でも、1シーズン完結型のほうが2.8倍見られています。

さらに、韓国語シリーズの上位20本のうち15本がこの形でした。

リミテッドシリーズ2240万時間
シーズン制810万時間

1本あたり

なぜ完結型が強いのか

理由は難しくないと思います。入口が低いからです。

シーズン制の作品は「シーズン1から見てください」が前提になります。世界の視聴者にとって、これは相当な負担です。今から10時間かけて前提を埋めろ、と言われているのと同じですから。

リミテッドシリーズは、その負担がゼロです。今日出会った作品を、今日から見られる。

Netflixは190か国以上でサービスを出しています。その全部の国で、常に「今日はじめて名前を聞いた人」が大多数です。完結型が有利になるのは、当然といえば当然でした。

ただし、韓国は「短い」わけではない

ここで誤解しやすい点を潰しておきます。

「1シーズン完結」と聞くと短い印象がありますが、『恋の通訳、できますか?』の総尺は13時間11分です。全12話。

レポートに載っている作品の尺を、言語ごとに平均するとこうなりました。

作品数 平均の総尺
韓国語シリーズ 572本 13時間57分
日本語シリーズ 1,223本 7時間02分

韓国のほうが2倍長い。 シーズンを重ねない代わりに、1シーズンにたっぷり入れている形です。

ただし、この「長い」は縮んでいる途中の数字です。Netflixで配信された韓国ドラマの総尺の中央値を、配信年ごとに並べるとこうなります。

韓国ドラマの総尺の中央値(Netflix配信年別)
2019: 16.8時間16.8時間20192020: 16.9時間20202021: 16.1時間20212022: 14.1時間20222023: 12.7時間20232024: 8.5時間8.5時間20242025: 13.1時間20252026: 10.7時間10.7時間2026

2019 16.8時間 / 2020 16.9時間 / 2021 16.1時間 / 2022 14.1時間 / 2023 12.7時間 / 2024 8.5時間 / 2025 13.1時間 / 2026 10.7時間

2019年は16時間49分、2026年上半期は10時間41分。7年で36%短くなっています。『ヴィンチェンツォ』は27時間00分、『愛の不時着』は22時間28分ありました。

『恋の通訳、できますか?』の13時間11分は、いまの中央値よりまだ長い側です。平均が13時間57分なのは、昔の長い作品が棚に残っているからでもあります。

韓国ドラマは「長い」のではなく「長かった」。いまも縮み続けている

これは視聴時間の稼ぎ方に直結します。同じ人数が最後まで見たとして、13時間の作品は7時間の作品の2倍の視聴時間になります。

数字の裏を取る

言い方を変えると、こういうことです。

視聴数 総尺 視聴時間
恋の通訳、できますか? 2,860万 13時間11分 3億7,770万時間
彼の真実、彼女の嘘 1億400万 4時間22分 4億5,430万時間

『彼の真実、彼女の嘘』のほうが3.6倍多くの人に見られているのに、視聴時間の差は1.2倍しかありません。尺が3倍違うからです。

だから「3億7,770万時間で6位」は、人気の順位ではなく、時間の順位です。ここを混ぜて読むと判断を間違えます。

この「視聴数で数えるか、視聴時間で数えるか」の話は、あらためて別の記事で書きました。結論だけ先に置いておきます。

言語 視聴時間 視聴数 平均総尺
韓国語 80億790万時間 7億380万 13時間57分
日本語 51億3,190万時間 7億2,820万 7時間02分

視聴時間では韓国が1.6倍。ところが視聴数では日本がわずかに上(1.03倍)です。

差の正体は尺でした。同じだけ見られても、作品が長いほうが時間は積み上がる。「日本の作品は世界で見られていない」という言い方は、正確ではありません。見られてはいるが、時間で数えるランキングの上に出てこない、が正確なところです。

ただし1本あたりに直すと、視聴数でも韓国が2.1倍(116.3万 対 55.5万)になります。合計では追いついていて、1本の力では負けている。 ここは分けて読む必要があります。

同じデータでも、合計で割るか1本あたりで割るかで結論が変わる

まとめ

  • 『恋の通訳、できますか?』は上半期3億7,770万時間で全シリーズ6位、韓国ドラマでは2位
  • キム・ソンホ主演の全12話。日本の福士蒼汰も出演している
  • 韓国語作品では1シーズン完結型が2.8倍見られている(1本あたり2,240万時間 対 810万時間)
  • 完結型が強いのは、世界のどの国にも「はじめて名前を聞く人」がいるから
  • ただし短いわけではない。韓国語シリーズの平均総尺は13時間57分で、日本語(7時間02分)の2倍
  • 視聴時間の順位は人気の順位ではない。尺の長さが効いている
  • 韓国ドラマの総尺の中央値は7年で36%減(16時間49分→10時間41分)。縮んでいる途中
  • 視聴数の合計では日本が1.03倍で上。ただし1本あたりでは韓国が2.1倍

数字の出典

  • 作品の視聴時間・視聴数・総尺・配信日・全地域配信の区分、言語別の集計、リミテッド216本とシーズン制389本の1本あたり、総尺の中央値 — Netflix「What We Watched」2026年上半期レポート(公開されているデータ一覧を当ブログで全数集計)
  • 作品情報(キャスト・話数) — オリコン

2.8倍・3.6倍・1.03倍・2.1倍は、上の表の数字からこちらで割って出しました。視聴数=視聴時間÷総尺で、人数ではありません。

次は、この尺の話をもう一段掘ります。韓国ドラマの尺は、実は年々短くなっています。レポートの数字でその推移を出します。


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