『サラ・キムという女』は上半期10位だった——ただしレポートには「레이디 두아」としか載っていない

『サラ・キムという女』は、2026年2月13日の配信開始から3日で日本の週間視聴ランキング3位に入り、その後2週連続1位を取りました。シン・ヘソン主演の全8話のサスペンスです。

では、この作品は世界でどれくらい見られたのか。Netflixの上半期エンゲージメントレポートを開いて「サラ・キムという女」を探しても、見つかりません。

載っているのは、この名前です。

레이디 두아

探せない数字は、無いのと同じ

正体を先に書きます。레이디 두아 は『サラ・キムという女』の原題です。「レディ ドゥア」と読みます。配信日は2月13日で一致します。

数字はこうでした。

『サラ・キムという女』(레이디 두아)
上半期の視聴時間 1億5,400万時間
2026年上半期の韓国語新作20本中 10位
世界配信 あり
日本の週間ランキング 2週連続1位(配信3日で3位)
1億5,400万時間
『サラ・キムという女』が2026年上半期に見られた時間。韓国語の新作20本中10位

日本で1位を取った作品が、世界の集計では真ん中あたり。これ自体は前に書いたとおりで、日本の順位と世界の順位は別物です。

問題はそこにたどり着けないことのほうです。

20本中13本が、原題のまま並んでいる

このブログでも上半期の韓国語新作20本を全部並べました。その一覧を数え直すと、こうなります。

本数
ハングル表記のまま載っているもの 13本
うち日本語の題名がまったく無いもの 11本
全体 20本
原題のまま13本(2026年上半期の韓国語新作20本)
日本語の題名あり7本(2026年上半期の韓国語新作20本)

半分以上が、日本の読者には読めない形で並んでいます。

自分が見た作品がそこにあるのに、気づけない。「韓国ドラマは20本しか出ていない」という話は伝わっても、「その中の1本が、先月自分が一気見したあの作品だ」とは繋がらない。

これは自分たちの記事の問題でもあります。原題のまま出した時点で、読者との接点を1つ捨てていました。

原題のまま載せた数字は、読者にとって「無い数字」と同じ

もう1つの落とし穴:配信日

同じ表に、もっと分かりにくい罠があります。

作品 上半期の順位 視聴時間 配信日
鉄槌教師 1位 5億1,470万時間 6月5日
エージェント・キム 16位 2,300万時間 6月26日

『エージェント・キム:リアクティベーティッド』は、この表では20本中16位です。数字だけ見れば、失敗作に見えます。

ですが前に書いたとおり、この作品は7月に世界1位を2週連続で取り、22か国で首位に立っています。

矛盾ではありません。上半期は6月30日で締まります。 6月26日配信のこの作品は、5日ぶんしか入っていません。

順位表は「集計の窓」で決まる。窓の端に配信された作品は、実力より低く出る

名前の問題は、韓国ドラマだけの話ではない

もう少し引いて見ます。このレポートには、シリーズだけで8,195本が載っています。そのうち、71%は英題しか書かれていません。

英題しか載っていない71%(シリーズ8,195本)
原題が読み取れる29%(シリーズ8,195本)

当ブログで言語別の集計をするとき、「◯%」という言い方を避けて「本数」と「1本あたり」で書いているのは、これが理由です。タイトルの文字種でしか言語を判定できないので、英題だけの作品は数えようがありません。

実際、この判定は一度まちがえました。漢字だけのタイトルを機械的に分けたら、『呪術廻戦』が中国語の作品に混ざったのです。

日本語も中国語も漢字を使うので、文字種だけでは割れません。そこで、こういう手当てを1つずつ足しました。

タイトルに入っていたら どちらと見なすか
「第N季」「第一季」 中国語
繁体字と簡体字が併記されている(区切りが3つ以上) 中国語
「第N期」「劇場版」「〜編」 日本語

「季」か「期」か。漢字1文字の違いで、作品の国籍が入れ替わります。 ここに気づくまで、日本語作品の本数が実際より少なく出ていました。

公式が出している一次資料でも、そのまま読むと間違えます。 ここは声を大にして書いておきたいところです。数字は正確ですが、並べ方は読者の都合に合わせて作られていません。

一次資料は「正しい」が「読みやすい」わけではない。読む側が手当てをする必要がある

レポートの数字を読むときに、補う2つ

ここまでをまとめると、この表を読むには2つの情報を自分で補う必要があります。

  1. 原題 — 日本語の題名と結びつける。結びつかない数字は使えない
  2. 配信日 — 集計の窓のどこに入っているか。端に近いほど低く出る

この2つを補わずに順位だけ見ると、「日本で2週連続1位の作品が一覧に無い」「7月に世界1位の作品が16位」という、事実と食い違う読み方になります。

数字そのものは正しい。読み方の問題です。

自分の好きな作品を、この表で探す方法

読み方の話ばかりでも仕方がないので、実際に使える手順を書いておきます。あなたが去年一気見したあの作品が、世界で何時間見られたのかは、自分で調べられます。

手順 やること
1 作品の原題を調べる(Wikipediaや配信ページに併記されている)
2 レポートのファイルで原題を検索する
3 配信日が一致するか確かめる
4 話数×1話の尺が、載っている総尺と合うか確かめる

3と4をやらないと、同じ原題の別作品をつかみます。今回の『サラ・キムという女』も、配信日(2月13日)と話数(全8話)の両方が合ったので同じ作品だと判断しました。1つだけの一致では決めない。 ここは面倒でも省かないほうがいいところです。

手順4については、もう一歩踏み込んだ確かめ方があります。レポートに載っている「視聴数」は、人数ではありません。視聴時間を作品の総尺で割った数です。つまり自分でも計算できます。

『鉄槌教師』で試すと、こうなります。

視聴時間 5億1,470万時間
総尺 10時間41分(=10.683時間)
割ると 4,818万
レポートの視聴数 4,820万

ほぼ一致します。自分の手元で検算できるということは、その行が本物だという確認にもなります。 原題が合っているか自信が持てないときは、この計算が合うかどうかで裏を取れます。

ついでに言うと、この定義を知らないと「視聴数4,820万人が見た」と読んでしまいます。人数ではありません。 1人が2回見れば2と数えられますし、途中でやめた人も時間ぶんだけ加算されます。

「それはNetflixが悪いのでは?」への答え

ここで反論が出ると思います。「日本語の題名を併記すればいいだけでは?」

半分はそのとおりだと思います。ただ、半分はそうでもありません。日本語の題名はNetflixの日本法人が日本向けに付けたもので、国によって題名は変わります。世界共通の資料に載せるなら、原題で統一するほうが筋は通っています。

つまりこれは、誰かのミスではなく、世界向けの資料と日本の読者の間にある距離です。埋めるとしたら、読む側か、間に立つ人間しかいません。

もう1つ、「原題で検索すればいいだけでは」という声もあると思います。これも半分はそのとおりです。ただ、ハングルをその場で入力できる人はそう多くありません。コピー元を探すところから始まるので、「原題を知っている人だけが数字にたどり着ける」構図は変わらないんですよね。ここは私の見立てですが、資料の側が変わるのを待つより、間に立つ側が毎回それをやるほうが早いと思っています。

このブログがやっているのは、その2つめです。原題を日本語題に直して、配信日で裏を取って、それから数字を出す。地味ですが、ここを飛ばすと数字が読者に届きません。

あなたが世界での数字を知りたい韓国ドラマは、何ですか。コメントで教えてもらえたら、この手順で調べて記事にします。

まとめ

  • 『サラ・キムという女』の原題は 레이디 두아。上半期1億5,400万時間で、韓国語新作20本中10位
  • 日本では配信3日で3位、その後2週連続1位
  • 上半期の韓国語新作20本のうち13本が原題のまま。うち11本は日本語の題名が無い
  • 『エージェント・キム』が16位に見えるのは、6月26日配信で5日ぶんしか集計されていないから
  • 順位表を読むには、原題配信日の2つを自分で補う
  • レポートのシリーズ8,195本のうち71%は英題しか載っていない。言語別の割合を出せないのはこのため
  • 原題と作品を結びつけるときは、配信日と話数×尺の両方を合わせる。1つだけの一致では決めない

数字の出典

  • 配信日・話数・キャスト・日本の週間ランキング(配信3日で3位、2週連続1位) — リアルサウンド / navicon
  • 上半期の視聴時間・順位・配信日・シリーズ8,195本・英題のみ71% — Netflix「What We Watched」2026年上半期レポート(当ブログで全数集計)
  • 『エージェント・キム』の7月の順位・22か国で首位 — 当ブログの過去記事

原題と日本語題の対応は、配信日(2月13日)と話数(全8話)の一致から確認しました。20本中13本という数え方は、当ブログの過去記事の一覧をこちらで数え直したものです。


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