『ダウンタイム』は2週目に29か国——中南米で越え、欧米で止まった

松岡茉優と仲里依紗が主演するNetflixシリーズ『ダウンタイム』。配信2週目に、世界の非英語シリーズで2位に入りました。

TOP10に入った国は、1週目の4か国から2週目は29か国に増えています。増えた25か国のうち、14か国はメキシコ・コロンビア・ペルーなど、スペイン語を話す中南米の国でした。

29か国
『ダウンタイム』が配信2週目にTOP10入りした国の数(1週目は4か国)

一方で、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・ブラジルには、1つも入っていません。

日本の実写ドラマは、国境を越えたのか、越えられなかったのか。今日はこの1本の国別ランキングを全部並べて、「どこまで越えたか」を見ていきます。

『ダウンタイム』とはどんな作品か

まず作品の確認です。Netflixの公式発表から抜き出しました。

  • 配信開始: 2026年9月17日(木)、Netflixで世界独占配信
  • 全8話を一挙配信。総尺は9時間10分
  • 主演: 松岡茉優(沼田文/形成外科医)、仲里依紗(遠山凜/カリスマ美容外科医)
  • 共演: 間宮祥太朗、田中みな実、永作博美、渡部篤郎ほか
  • 監督: Yuki Saito(『アンメット ある脳外科医の日記』)、脚本: 池上純哉
  • 英題: Plastic Beauty

物語の軸は、2人の医師の対立です。大学病院を追われた腕の立つ形成外科医・沼田文が、カリスマ美容外科医・遠山凜のクリニックに入る。美容整形の「光と闇」を、医師と患者の両方から描く医療ドラマです。

Netflixシリーズ『ダウンタイム』(Netflix公式ニュース)(公式ページ)

2週間の数字を置く

Netflixは毎週火曜日に、前の週(月曜〜日曜)の世界TOP10を公表しています。作品ごとの視聴時間・視聴数と、93か国それぞれの順位まで、誰でもダウンロードできます。そこから『ダウンタイム』の行を抜き出しました。

週 世界順位(非英語シリーズ) 視聴時間 視聴数 TOP10入りした国 1位の国
9/14〜9/20(配信4日分) 5位 2,080万時間 230万 4か国 日本
9/21〜9/27 2位 4,650万時間 510万 29か国 日本・香港
『ダウンタイム』世界順位(非英語シリーズ)
9/14週: 5位5位9/14週9/21週: 2位2位9/21週

9/14週 5位 / 9/21週 2位

木曜配信なので、1週目には4日分しか入っていません。それでも、2週目の視聴数は1週目の約2.2倍です。日数の差を考えても、2週目にはっきり伸びています。

1週目にTOP10入りした4か国は、日本(1位)・香港(3位)・台湾(7位)・タイ(7位)。ここまでは、日本のドラマがよく見られる「いつもの範囲」です。

話が変わるのは2週目です。

29か国の中身を分ける

2週目にTOP10入りした29か国を、地域で分けました。

地域 国の数 入った国(カッコ内は順位)
東アジア・東南アジア 9か国 日本(1)、香港(1)、タイ(2)、シンガポール(3)、フィリピン(4)、台湾(4)、ベトナム(5)、インドネシア(6)、マレーシア(6)
中南米のスペイン語圏 14か国 ボリビア(3)、エクアドル(4)、ペルー(4)、コロンビア(5)、ホンジュラス(5)、パラグアイ(5)、メキシコ(6)、ニカラグア(6)、ベネズエラ(6)、チリ(7)、ドミニカ共和国(7)、グアテマラ(8)、エルサルバドル(9)、コスタリカ(10)
フランスの海外地域 4か国・地域 グアドループ(4)、マルティニーク(4)、レユニオン(6)、ニューカレドニア(8)
その他 2か国 モロッコ(7)、カタール(10)
中南米のスペイン語圏14か国
東アジア・東南アジア9か国
フランスの海外地域4か国
その他2か国

2週目にTOP10入り

Netflixが国別ランキングを出している中南米のスペイン語圏は17か国です。『ダウンタイム』はそのうち14か国に入りました。入っていないのは、アルゼンチン・ウルグアイ・パナマの3か国だけです。

反対に、入っていない国も並べておきます。

  • アメリカ、カナダ
  • イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア
  • ブラジル
  • 韓国

数え直していて驚いたのは、アジアの外の入り方がここまで1つの地域に偏っていたことです。アジアの外に出た20か国・地域のうち、16がカリブ海を含む中南米でした(フランス領のグアドループ・マルティニークを含みます)。

『ダウンタイム』はアジアの外へ出た。ただし、行き先はほぼ中南米。欧米とブラジルには1つも入っていない

日本の実写シリーズと並べると

この形は『ダウンタイム』だけのものなのか。ここ1年で世界TOP10に入った日本の実写シリーズを、配信2週目どうしで並べました。

作品(配信日) 2週目の世界順位 視聴数 TOP10入りした国 中南米スペイン語圏(17か国中) 欧米とブラジル(8か国中)
イクサガミ(2025/11/13) 1位 720万 88か国 15 7
今際の国のアリス シーズン3(2025/9/25) 1位 700万 86か国 17 7
ダウンタイム(2026/9/17) 2位 510万 29か国 14 0
匿名の恋人たち(2025/10/16) 3位 260万 31か国 13 1
ガス人間(2026/7/2) 4位 340万 28か国 0 0
地獄に堕ちるわよ(2026/4/27) 4位 260万 7か国 0 0
九条の大罪(2026/4/2) 4位 220万 3か国 0 0
SとX(2026/8/20) 10位 90万 5か国 0 0

「欧米とブラジル」は、アメリカ・カナダ・イギリス・フランス・ドイツ・スペイン・イタリア・ブラジルの8か国です。

イクサガミ88か国
今際の国のアリス S386か国
匿名の恋人たち31か国
ダウンタイム29か国
ガス人間28か国
地獄に堕ちるわよ7か国
SとX5か国
九条の大罪3か国

配信2週目にTOP10入りした国の数

表から言えることは3つです。

1つめ。2026年に配信され世界TOP10に入った日本の実写シリーズでは、『ダウンタイム』が2週目の順位も視聴数もいちばん上です。『ガス人間』『地獄に堕ちるわよ』は4位どまりでした。

2つめ。それでも、80か国を超える「全世界型」には届いていません。そこにいるのは『イクサガミ』と『今際の国のアリス』の2本だけです。この2本だけが、欧米とブラジルの8か国のうち7か国に入っています。

3つめ。20〜30か国のところに、行き先の違う作品が3本並んでいます。『ダウンタイム』と『匿名の恋人たち』は中南米へ。『ガス人間』は中南米には1つも入らず、ナイジェリア・ケニア・アラブ首長国連邦・クウェートなど、アフリカと中東に出ていました。

つまり日本の実写は、「越えた/越えない」の2択ではありません。越えた先が、作品によって違うのです。

「美容整形が多い国で見られた」わけではない

ここで、最初に思いついた説明を自分で崩しておきます。

「美容整形がテーマだから、美容整形が身近な国で見られたのでは?」という説明です。分かりやすいのですが、数字と合いません。

国際美容外科学会(ISAPS)の2024年の調査では、美容医療の施術件数がいちばん多い国はアメリカ(610万件超)、2位がブラジル(310万件)、3位が日本です。

アメリカ610万件
ブラジル310万件

2024年の美容医療の施術件数・ISAPS調べ

『ダウンタイム』は、そのアメリカにもブラジルにも入っていません。テーマへの関心だけで国が決まるなら、まずこの2か国に入っているはずです。

テーマが身近かどうかでは、行き先は説明できない。これが1つ分かったことです。

中南米へ越えた理由(ここから先は私の見立てです)

ここからは数字ではなく、私の見立てです。Netflixは国ごとの視聴時間を出していないので、「なぜ」はデータからは確かめられません。そのうえで、作品のつくりから考えます。

私は、ジャンルが行き先を決めていると見ています。

表をもう一度見てください。全世界に届いた2本は、どちらも命がけのアクションです。『イクサガミ』は明治の剣士たちが殺し合う時代劇のデスゲーム、『今際の国のアリス』は現代東京のデスゲーム。筋が単純で、言葉より画で押せます。欧米の「ジャンルもの」の棚にそのまま並べられる作品です。

中南米に出た2本は違います。『匿名の恋人たち』は恋愛劇、『ダウンタイム』は2人の女性が信念をぶつけ合う人間ドラマです。美と金、母と娘、成功者の家族。人間関係の濃さで引っぱる作りです。

中南米には「テレノベラ」と呼ばれる連続メロドラマの長い歴史があります。対立する2人の女性、富と欲、家族の秘密。どれもテレノベラの定番の部品です。『ダウンタイム』は医療ドラマの形をしていますが、骨組みはこの好みに近い。私はそこに中南米で伸びた理由があると考えています。

逆に、同じ「対立する2人」の話でも、欧米では人間ドラマの非英語作品は2週目に広がりにくい。今年の韓国ヒット作が欧米に入ったのも、『鉄槌教師』のような筋で押す作品でした(10月6日の『スキャンダル』の記事で、2週目の国の数を比べています)。

ただし、これは2作品ずつからの見立てです。中南米で伸びた日本の実写が、たまたま人間ドラマ寄りだった可能性も残っています。

「欧米に入らなければ失敗」なのか

ここまで読んで、「結局、欧米には届かなかった話か」と思った方もいるかもしれません。私はそうは考えていません。

まず、2週目の世界2位は、今年の日本の実写シリーズの最高位です。510万という視聴数は、『ガス人間』の1.5倍、『地獄に堕ちるわよ』の約2倍あります。

次に、中南米のスペイン語圏14か国は、小さな市場ではありません。メキシコとコロンビアの両方でTOP10に入っています。

日本の実写は長いあいだ、「アジアでは見られるが、その外には出ない」と言われてきました。今年の『地獄に堕ちるわよ』は2週目に7か国、うちアジアの外はゼロです。それと比べれば、『ダウンタイム』はアジアの外に20か国・地域ぶん出ています。越えたのは確かです。

越えられなかったのは、欧米とブラジルという「いちばん大きな扉」だけ。そこを開けたのは、今のところデスゲームの2本しかありません。

みなさんは、日本の実写ドラマが欧米で当たるとしたら、どんなジャンルだと思いますか。デスゲーム以外の答えがあれば、ぜひコメントで教えてください。

次に見るところ

この記事は、10月5日時点で公表されていた2週目(9/21〜9/27)までの数字で書いています。3週目(9/28〜10/4)の数字は、10月6日(火)にNetflixが公表しています。

見るところは2つです。

  • アルゼンチン・ウルグアイ・パナマが加わって、中南米の17か国を埋めきるか
  • アメリカやブラジルに1つでも入るか。入れば、中南米から北と南へ口コミが広がったことになります

どちらも入らなければ、この作品は「中南米まで越える型」だと言えます。続きの数字は、また追いかけます。

まとめ

  • 『ダウンタイム』(2026年9月17日配信・全8話)は、配信2週目に世界の非英語シリーズで2位。視聴時間4,650万時間・視聴数510万
  • TOP10入りした国は、1週目の4か国から29か国へ。増えた分の中心は中南米のスペイン語圏(17か国中14か国)
  • アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・ブラジルには1つも入っていない
  • 2026年の日本の実写シリーズでは、2週目の順位・視聴数ともに最高。それでも80か国超の「全世界型」は『イクサガミ』『今際の国のアリス』の2本だけ
  • 美容整形の件数が多いアメリカ・ブラジルに入っていないので、テーマの身近さでは説明できない
  • 見立て: 日本の実写は「越えた/越えない」ではなく、ジャンルで越える先が変わる。人間ドラマは中南米へ、デスゲームは欧米まで

数字の出典

「中南米のスペイン語圏17か国」は、Netflixが国別ランキングを出している93か国のうち、アルゼンチン・ボリビア・チリ・コロンビア・コスタリカ・ドミニカ共和国・エクアドル・エルサルバドル・グアテマラ・ホンジュラス・メキシコ・ニカラグア・パナマ・パラグアイ・ペルー・ウルグアイ・ベネズエラを当ブログで数えたものです。グアドループ・マルティニークはフランスの海外地域なので、別に数えています。「2.2倍」「1.5倍」「約2倍」は、上の表の視聴数からこちらで割って出しました。


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