「Netflixは一気見の場所。毎週1話ずつ出す韓国ドラマは、勢いが続かなくて不利」。よく聞く話です。私もそう思っていました。
ところが、去年の秋に配信された『暴君のシェフ』(イム・ユナ、イ・チェミン主演)の週ごとの数字を並べると、まったく逆の形が出てきます。
配信開始から6週目に、1週間で9,460万時間。この週が最大でした。今日は「毎週配信は不利」という通説を、Netflixの週間TOP10の公式データで確かめます。
『暴君のシェフ』はどう配信されたか
まず作品の確認です。
- 配信開始: 2025年8月23日(土)。韓国のtvNでの放送と同時に、Netflixで配信
- 全12話。毎週土・日に新しい話が出る週次配信
- 主演: イム・ユナ(フレンチのシェフ、ヨン・ジヨン)、イ・チェミン(暴君イ・ホン)
- 制作: スタジオドラゴン
現代のシェフが朝鮮時代にタイムスリップし、悪名高い暴君の料理人になる。時代劇の形をとったラブコメです。
結果も先に置いておきます。Netflixの2025年下半期レポートで、この作品は5億8,830万時間。下半期の全シリーズの中で世界3位でした。上にいたのは『ウェンズデー』シーズン2と『ストレンジャー・シングス』シーズン5だけです(CJ ENMの発表による)。
日本でも強く、国別ランキングでは4週連続で1位でした。
週ごとの視聴時間を並べる
Netflixは毎週、前の週(月曜〜日曜)の世界TOP10を公表しています。作品ごとの視聴時間・視聴数・総尺まで、誰でもダウンロードできます。そこから『暴君のシェフ』の行を全部抜き出しました。
| 週(日曜で表記) | 世界順位(非英語シリーズ) | 視聴時間 | その週までに出ていた尺 |
|---|---|---|---|
| 8/24(配信2日分) | 4位 | 940万時間 | 2時間39分 |
| 8/31 | 2位 | 4,320万時間 | 5時間20分 |
| 9/7 | 2位 | 5,850万時間 | 7時間50分 |
| 9/14 | 1位 | 7,000万時間 | 10時間20分 |
| 9/21 | 1位 | 8,470万時間 | 12時間58分 |
| 9/28(最終話の週) | 3位 | 9,460万時間 | 15時間41分 |
| 10/5 | 3位 | 7,640万時間 | 15時間41分 |
| 10/12 | 7位 | 3,500万時間 | 15時間41分 |
| 10/19 | 9位 | 2,280万時間 | 15時間41分 |
| 10/26 | 10位 | 1,730万時間 | 15時間41分 |
8/24 9.4百万時間 / 8/31 43.2百万時間 / 9/7 58.5百万時間 / 9/14 70百万時間 / 9/21 84.7百万時間 / 9/28 94.6百万時間 / 10/5 76.4百万時間 / 10/12 35百万時間 / 10/19 22.8百万時間 / 10/26 17.3百万時間
視聴時間は、最終話が出た週まで5週続けて増えています。2週目の4,320万時間から、6週目の9,460万時間へ。2.2倍です。
「その週までに出ていた尺」の欄にも注目してください。公式データの総尺の欄が、毎週約2時間半ずつ伸びています。土日に1話ずつ増えていった跡が、そのまま数字に残っています。
世界TOP10には10週いました。TOP10にいた週の視聴時間を足すと、5億1,190万時間です。
一気見で出た作品は2週目に山が来る
比べる相手として、全話を一度に出した韓国ドラマを見ます。今年の上半期でいちばん当たった『鉄槌教師』です。
| 週 | 『暴君のシェフ』(毎週配信) | 『鉄槌教師』(一気見配信) |
|---|---|---|
| 1週目 | 940万時間 | 6,870万時間 |
| 2週目 | 4,320万時間 | 2億2,580万時間 |
| 3週目 | 5,850万時間 | 1億2,620万時間 |
| 4週目 | 7,000万時間 | 7,820万時間 |
| 5週目 | 8,470万時間 | 4,990万時間 |
| 6週目 | 9,460万時間 | 3,870万時間 |
『鉄槌教師』は2週目に2億2,580万時間。山の高さでは『暴君のシェフ』の2倍以上です。そこから毎週2〜4割ずつ落ちていき、6週目には山の6分の1になっています。
形がまるで違います。一気見の作品は最初に大きな山を作って、あとは下る。毎週配信の作品は坂を登り続けて、最終話の週に山が来る。
ここで「たまたま2本がそうだっただけでは」と思う方もいるはずです。私もそれが気になったので、数を増やしました。
世界1位を取った韓ドラ16本で比べる
2025年6月から2026年9月27日の週までに、世界の非英語シリーズTOP10で1位を取った韓国ドラマを全部拾いました。バラエティは外しています。配信の形は、公式データの総尺の欄が週ごとに伸びているかどうかで分けました。
| 配信の形 | 作品 | TOP10にいた週数 | 視聴時間が最大だった週 |
|---|---|---|---|
| 毎週配信 (5本) |
暴君のシェフ | 10週 | 6週目 |
| Dynamite Kiss(英題) | 9週 | 7週目 | |
| エージェント・キム | 8週 | 5週目 | |
| My Royal Nemesis(英題) | 8週 | 7週目 | |
| Sold Out on You(英題) | 7週 | 6週目 | |
| 一気見配信 (11本) |
鉄槌教師 | 10週 | 2週目 |
| イカゲーム シーズン3 | 9週 | 1週目 | |
| 恋の通訳、できますか? | 5週 | 2週目 | |
| Genie, Make a Wish(英題) | 5週 | 2週目 | |
| As You Stood By(英題) | 5週 | 2週目 | |
| Bloodhounds シーズン2(英題) | 5週 | 2週目 | |
| Mercy For None(英題) | 5週 | 2週目 | |
| The Price of Confession(英題) | 4週 | 2週目 | |
| Cashero(英題) | 4週 | 2週目 | |
| Boyfriend on Demand(英題) | 4週 | 2週目 | |
| The Art of Sarah(英題) | 4週 | 2週目 |
世界TOP10にいた週数
一気見配信の11本は、すべて1〜2週目に山が来ている。毎週配信の5本は、すべて5〜7週目に山が来ている
例外が1本もありません。数え直していて、ここがいちばん驚いたところです。山の位置が、配信の形だけできれいに2つに分かれました。
TOP10にいた週数も、毎週配信のほうが長い。一気見配信で10週近く残ったのは、『鉄槌教師』と『イカゲーム』シーズン3の2本だけです。この2本を除けば、一気見配信の9本はすべて4〜5週でTOP10から消えています。毎週配信の5本は、いちばん短くても7週でした。
通説の半分は正しい
では「毎週配信は不利」は、まったくの間違いなのか。そうでもありません。山の高さでは、一気見配信が勝っています。
1週間の視聴数(視聴時間を尺で割った数)の最大値で比べると、毎週配信の5本でいちばん高いのは『エージェント・キム』の1,050万。一気見配信のほうは『イカゲーム』シーズン3が6,010万、『鉄槌教師』が2,110万です。『The Art of Sarah』も1,000万あります。
ここにはもうひとつ、データの仕組みも関わっています。Netflixの視聴数は「視聴時間 ÷ 総尺」です。毎週配信の作品は、その週までに出ている話の尺で割られています。
『暴君のシェフ』の視聴数は2週目の810万が最大で、そこからは750万、680万、650万、600万と下がっています。視聴時間は増え続けているのに、視聴数では下り坂に見える。話数が増えるほど、割る数が大きくなるからです。それでも9月の2週は世界1位でした。
まとめると、こうなります。
- 一週の瞬間風速を見るなら、一気見配信が強い。通説はここでは正しい
- 見られ続ける長さを見るなら、毎週配信が強い。通説はここでは逆
「勢いが続かない」のは、むしろ一気見配信のほうでした。
なぜ坂を登り続けるのか(ここから先は私の見立てです)
ここからは数字ではなく、私の見立てです。
1つめは、追いつく人が毎週増えること。 毎週配信は、途中から見始めても「来週の新しい話」に間に合います。話題を聞いた人が1話目から追いかけ、最新話に追いつく。その人たちの視聴が毎週積み上がっていきます。全話が出ている作品には、この「追いつく」という動きがありません。
2つめは、話題が6週間途切れないこと。 毎週末に新しい話が出るたび、SNSで感想が流れます。一気見の作品は、配信直後の1〜2週に話題が集中して、そこで燃え尽きやすい。
3つめは、テレビ放送と一緒に走っていること。 ここは正直に書いておきます。今回の毎週配信の5本は、どれも韓国のテレビ局の放送と同時に出たドラマです。『暴君のシェフ』はtvNで最高20%の視聴率を取ったと、CJ ENMが発表しています。韓国の茶の間の話題が、そのまま世界の配信に乗っている面があります。だから「配信の形だけが理由」とは言い切れません。
それでも、山が来る週がここまできれいに分かれるのは、配信の形の影響が大きいと私は見ています。
みなさんは毎週配信の韓ドラを、毎週追いかける派でしょうか。それとも完結を待ってから一気に見る派でしょうか。よければコメントで教えてください。
これからの見方
この結果から、Netflixの週間ランキングを見るときのコツが1つ出てきます。
毎週配信の作品は、初週の順位で判断しない。
『暴君のシェフ』は初週4位でした。パク・ウンビン主演の『Spooky in Love』(英題)という毎週配信の韓ドラは初週8位から、4週目に3位まで上がっています。初週の順位だけで「今回は当たらなかった」と決めると、山が来る前に見切ることになります。
逆に、一気見配信の作品は2週目の数字でほぼ決まります。2週目が山なので、そこで伸びなければ、その後に伸びることはまずありません。昨日の記事で取り上げた『スキャンダル』も一気見配信です。2週目の数字が、あの作品の山だと考えるのが自然です。
まとめ
- 『暴君のシェフ』(2025年8月23日配信・全12話・毎週配信)は、視聴時間が6週目に最大(9,460万時間)。5週続けて増えた
- 一気見配信の『鉄槌教師』は2週目が山(2億2,580万時間)で、6週目にはその6分の1
- 世界1位を取った韓ドラ16本で数えると、一気見配信11本はすべて1〜2週目に山、毎週配信5本はすべて5〜7週目に山
- TOP10にいた週数は、毎週配信が平均8.4週、一気見配信が平均5.5週
- 一週の瞬間風速では一気見配信が強い。見られ続ける長さでは毎週配信が強い。「毎週配信は勢いが続かない」は、半分逆だった
- 毎週配信の作品は、初週の順位で判断しないこと
数字の出典
- 週ごとの世界順位・視聴時間・視聴数・総尺、TOP10にいた週数、日本の国別順位(『暴君のシェフ』ほか本文の16本と『Spooky in Love』『スキャンダル』) — Netflix 週間TOP10(公式)の公開データ(全世界・国別のダウンロードファイル、2026年9月27日の週まで)を当ブログで集計
- 視聴数の定義(視聴時間 ÷ 総尺) — Netflix「Top 10 Things About Netflix Top 10」
- 2025年下半期の5億8,830万時間・世界3位、tvNの最高視聴率20% — CJ ENM(2026年1月23日)
- 配信開始日・全12話・tvNと同時の毎週配信 — What’s on Netflix
- 日本での配信・キャスト・制作 — ORICON NEWS
- 『Spooky in Love』が韓国のtvNドラマで土日の毎週配信であること — What’s on Netflix
「毎週配信」「一気見配信」の分け方は、公式データの総尺(runtime)の欄が週ごとに伸びているかどうかで、当ブログが判定したものです。対象は2025年6月〜2026年9月27日の週に世界の非英語シリーズで1位を取った韓国ドラマで、バラエティと、韓国作品かどうかを確かめきれなかった数本は外しています(外した作品はTOP10の週数が3〜5週で、入れても一気見配信の平均は下がる側です)。平均・倍率は上の数字からこちらで計算しました。
総帥(そうすい)のHP 

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