ソン・イェジンとチ・チャンウクが初めて共演したNetflixシリーズ『スキャンダル』。配信2週目に世界の非英語シリーズで3位に入りました。
ここまでは「ヒット」と書いてよい数字です。ただ、同じ週の国別ランキングを並べると、少し違う形が見えてきます。
今年上半期に世界1位を取った韓国ドラマは、2週目に60〜91か国に入っていました。『スキャンダル』は18か国です。しかも、そのうち13か国がアジアです。
今日は、この「アジアの中では強いのに、外に出ていない」形を、作品のつくりから考えます。
『スキャンダル』とはどんな作品か
まず作品の確認です。
- 配信開始: 2026年9月18日(金)、Netflixで世界独占配信
- 全8話のリミテッドシリーズ(1シーズンで完結する形)。総尺は7時間46分
- 主演: ソン・イェジン(チョ夫人)、チ・チャンウク(チョ・ウォン)、ナナ(アン・ヒヨン)
- 原作: フランスの作家ラクロの小説『危険な関係』
『愛の不時着』のソン・イェジンと、チ・チャンウクは今回が初共演です。
もうひとつ大事なのが、これがリメイクだという点です。2003年に、ペ・ヨンジュン主演で映画『スキャンダル』が公開されました。350万人以上の観客を集めた作品です。今回のドラマは、その映画と同じく『危険な関係』を朝鮮時代に置き換えています。
物語は、才能に恵まれながら儒教の秩序の中で生きる貴婦人チョ夫人が、遊び人として知られる貴族チョ・ウォンに「ある賭け」を持ちかけるところから始まります。そこに若い未亡人のアン・ヒヨンが入ってきて、駆け引きが本物の感情に変わっていく。いわゆる宮廷の愛憎劇です。
2週間の数字を置く
Netflixは毎週火曜日に、前の週(月曜〜日曜)の世界TOP10を公表しています。作品ごとの視聴時間・視聴数・国別の順位まで、誰でもダウンロードできます。そこから『スキャンダル』の行を抜き出しました。
| 週 | 世界順位(非英語シリーズ) | 視聴時間 | 視聴数 | TOP10入りした国 | 1位の国 |
|---|---|---|---|---|---|
| 9/14〜9/20(配信3日分) | 7位 | 1,450万時間 | 190万 | 10か国 | 1か国(韓国) |
| 9/21〜9/27 | 3位 | 2,190万時間 | 280万 | 18か国 | 3か国 |
1週目は金曜配信なので3日分しか入っていません。それで7位、2週目に3位。順位だけ見れば、きれいに上がっています。
国別も見ておきます。韓国では1週目に1位、2週目は2位でした。2週目に韓国で1位だったのは、バラエティ番組(英題 Kian’s Bizarre B&B)です。日本では2週目に3位に入っています。
9/14週 7位 / 9/21週 3位
ここまでは順調な作品に見えます。気になったのは、次の比較をしたときでした。
今年の韓国ヒット作と並べると
今年上半期に世界で大きく当たった韓国ドラマ3本と、配信2週目どうしで比べました。どれもリミテッドシリーズなので、形の条件は『スキャンダル』と同じです。
| 作品 | 2週目の世界順位 | 視聴数 | TOP10入りした国 | 1位の国 |
|---|---|---|---|---|
| 鉄槌教師(2026年6月) | 1位 | 2,110万 | 91か国 | 46か国 |
| エージェント・キム(2026年6〜7月) | 1位 | 1,050万 | 79か国 | 11か国 |
| 恋の通訳、できますか?(2026年1月) | 1位 | 900万 | 60か国 | 15か国 |
| スキャンダル(2026年9月) | 3位 | 280万 | 18か国 | 3か国 |
視聴数でいうと、『鉄槌教師』の2週目は『スキャンダル』の約7.5倍です。『恋の通訳、できますか?』と比べても約3.2倍あります。
ここで終わると「今回は当たらなかった」という話になります。でも、国の中身を分けると、もっとはっきりした形が出てきます。
差はすべて「アジアの外」で生まれていた
TOP10入りした国を、アジア(東アジア・東南アジア・南アジアの14か国)と、それ以外に分けました。
| 作品 | アジア14か国のうち | アジア以外 |
|---|---|---|
| 鉄槌教師 | 14か国 | 77か国 |
| エージェント・キム | 14か国 | 65か国 |
| 恋の通訳、できますか? | 14か国 | 46か国 |
| スキャンダル | 13か国 | 5か国 |
アジアの中では、今年のヒット作とほぼ同じ(14か国中13か国)。差のほとんどは、アジアの外で生まれている
アジアでの『スキャンダル』は強いです。インドネシア・シンガポール・ベトナムで1位。香港・マレーシア・フィリピン・韓国・台湾で2位。日本で3位、タイで4位。入っていないのはインドだけです。
一方、アジアの外で入ったのは5か国だけでした。クウェートとカタールが8位、ペルーとベネズエラが9位、エルサルバドルが10位です。どれも下のほうです。
比べると違いがよく分かります。『鉄槌教師』は2週目にブラジルで1位、フランスとメキシコで2位、アメリカでも9位に入っていました。
正直に書くと、数え直す前は「ソン・イェジンとチ・チャンウクなら世界でも当たるだろう」と思っていました。アジアの順位だけを見ていると、そう見えます。国を全部並べて初めて、外側が空いていることに気づきました。
なぜアジアの外に出ていないのか(ここから先は私の見立てです)
ここからは数字ではなく、私の見立てです。Netflixは国ごとの視聴時間を出していないので、「なぜ」はデータからは確かめられません。そのうえで、作品のつくりから3つ考えます。
1つめは、時代劇だということ。 朝鮮時代の身分や儒教の決まりごとが、物語の前提になっています。「愛欲を持つこと自体がタブーだった時代」という設定は、その窮屈さを知っている人ほど刺さります。韓国の時代劇を見慣れたアジアの視聴者には説明がいりません。でも、初めて触れる人には、まず世界の仕組みから入る必要があります。『鉄槌教師』や『エージェント・キム』は現代が舞台で、この入口の負担がありません。
2つめは、リメイクの「元」がアジアで知られていること。 2003年の映画『スキャンダル』は、ペ・ヨンジュンの主演作です。日本で『冬のソナタ』が放送されたのと同じ頃、韓流が広がり始めた時期の作品です。「あの映画をドラマにした」という話題が効くのは、その映画を覚えている地域だけです。原作の『危険な関係』は欧米でも有名ですが、欧米の視聴者にとっては、すでに何度も映像化された話の「韓国版」になります。新しさで選ばれにくい位置です。
3つめは、主演2人の知られ方。 ソン・イェジンもチ・チャンウクも、アジアでは長く主演を続けてきた俳優です。ただ、俳優の名前で再生ボタンを押すのは、その俳優を前から知っている人です。名前の力が強い作品ほど、名前を知っている地域に寄りやすい。私はそう考えています。
逆に言えば、『鉄槌教師』のように俳優を知らなくても筋だけで押せる作品が、アジアの外まで届いています。ここはまた別の記事で確かめたいところです。
「18か国なら失敗作では?」への答え
ここまで読んで、「結局、当たらなかった作品の話か」と思った方もいるかもしれません。私はそうは考えていません。理由は2つです。
ひとつめ。アジア13か国でTOP10に入り、そのうち3か国で1位というのは、十分に強い数字です。日本では、その週に1位だった日本作品『Plastic Beauty』のすぐ後ろにいます。
ふたつめ。比べた3本は、どれもその年いちばん当たった部類です。『鉄槌教師』は上半期のシリーズ全体で世界3位でした。比べる相手が強すぎる、という面はあります。
大事なのは、成功か失敗かではありません。「どこで当たっているか」の形が違う、ということです。同じ「世界3位」でも、91か国で広く当たる作品と、18か国で深く当たる作品があります。順位の数字は同じでも、中身は別物です。
みなさんは『スキャンダル』を、どちらの入口から見始めましたか。ソン・イェジンの名前でしょうか。それとも2003年の映画を覚えていたからでしょうか。よければコメントで教えてください。
次に見るところ
配信3週目(9/28〜10/4)の数字は、10月6日(火)にNetflixが公表します。この記事の公開日です。
見るところは1つだけです。アジアの外の国が増えるかどうか。
- 増えるなら、口コミで外に広がり始めたということです。1〜2週目の形は「まだ届いていなかっただけ」になります
- 増えないなら、この作品はアジアで深く見られる型だと言えます
どちらになっても、続きの数字はここで追いかけます。
まとめ
- 『スキャンダル』(2026年9月18日配信・全8話)は、配信2週目に世界の非英語シリーズで3位。視聴時間2,190万時間・視聴数280万
- ただし、TOP10入りしたのは18か国。今年の韓国ヒット作は2週目に60〜91か国に入っていた
- アジア14か国のうち13か国には入っている。差はほぼすべてアジアの外(5か国 vs 46〜77か国)
- 理由の見立ては3つ。時代劇という入口の負担、リメイク元の映画がアジアで知られていること、主演の名前の力がアジアに寄っていること
- 同じ「世界3位」でも、広く当たる作品と深く当たる作品がある。順位だけでは見分けられない
- 3週目の数字は10月6日に出る。アジアの外が増えるかどうかで、この作品の型が決まる
数字の出典
- 世界順位・視聴時間・視聴数・総尺、国別のTOP10入りと順位(『スキャンダル』『鉄槌教師』『エージェント・キム』『恋の通訳、できますか?』、韓国の週間1位のバラエティ、日本の週間1位『Plastic Beauty』) — Netflix 週間TOP10(公式)の公開データ(全世界・国別のダウンロードファイル)を当ブログで集計
- 配信日・話数・キャスト・2003年の映画のリメイクであること・観客動員350万人超 — さきがけ(共同通信配信)2026年9月8日、Wikipedia「The Scandal (2026 TV series)」)
- 『鉄槌教師』が上半期シリーズ世界3位 — Netflix「What We Watched」2026年上半期レポート
「アジア14か国」は、Netflixが国別ランキングを出している93か国のうち、東アジア・東南アジア・南アジアの国(日本・韓国・台湾・香港・シンガポール・マレーシア・インドネシア・タイ・ベトナム・フィリピン・インド・パキスタン・バングラデシュ・スリランカ)を当ブログで数えたものです。中東は「アジア以外」に入れています。7.5倍・3.2倍は、上の表の視聴数からこちらで割って出しました。
総帥(そうすい)のHP 